LDとLDHは同じ検査?
結果表の「LD」「LDH」は、いずれも乳酸脱水素酵素を指す呼び名です。細胞がエネルギーを作る過程に関わり、筋肉、肝臓、腎臓、赤血球などに多く含まれます。これらの細胞が傷つくと、酵素が血液へ出て値が上がることがあります。
健診の肝機能欄に並んでいても、肝臓だけの検査ではありません。また、数値は血液中の酵素の活性を示し、乳酸そのものの濃度とは異なります。
基準範囲124〜222 U/Lと、結果表の判定の違い
日本臨床化学会の成人男女の共用基準範囲は124〜222 U/Lです。京都大学医学部附属病院のIFCC対応法でも同じ範囲が示されています。小児や治療中の人などへ、そのまま病気の判定値として当てはめることはできません。
| 結果表で見る欄 | 確認する内容 | 判断するときの注意 |
|---|---|---|
| 検査値・単位 | LDまたはLDHの値とU/Lの表記 | ほかの検査項目や、単位の異なる数値と取り違えない |
| 基準範囲 | 検査した施設が印字した下限・上限 | 共用基準範囲と違う場合も、まずその施設の範囲で確認する |
| H・L、要再検査など | 範囲外の印と、健診全体の判定・受診指示 | H・Lは病名ではない。再検査の時期が不明なら健診先へ問い合わせる |
たとえば「LDH 230 U/L、基準範囲124〜222 U/L」なら、記載された上限を超えています。ただし、230という値だけでは原因も緊急度も決まりません。前回からの変化、症状、ほかの項目を合わせて判断します。
健診のA・B・C・Dなどは、基準範囲と同じものではありません。東京大学保健センターは、LDHについて独自の健診判定基準を設け、全体の検査結果や過去値も踏まえて医師が判定すると説明しています。別の施設の区分で、自分の結果表の受診指示を取り消さないでください。
旧JSCC法とIFCC法の値は換算する?
国内では2020年4月から、準備の整った施設でIFCC法への変更が始まりました。LDHは旧JSCC法の値に換算係数を掛けず、そのままの数値を使います。同時期に変更されたALPの換算方法は、LDHには使いません。
ただし、LDHの型の一つであるLD5の割合が多い血液では、IFCC法の方が低めになることがあります。過去の検査と施設や方法が変わっている場合は、「下がったから改善した」と値だけで判断せず、両方の結果表を医師に見せてください。結果表で検査法がわからなければ、健診先に確認できます。
型別の検査については、LDHアイソザイム、ALPの結果もある場合はALPと旧検査法の比べ方を確認できます。
「溶血あり」は、溶血性貧血という意味?
溶血は赤血球が壊れることです。赤血球内にもLDHが多いため、採血から測定までの間に赤血球が壊れると、LDHが高く測定されることがあります。倉敷中央病院の検査案内でも、検体が溶血した場合に必要に応じて再採血するとしています。
| 赤血球が壊れる場所 | LDHとの関係 | 医療機関で確認すること |
|---|---|---|
| 採血した血液の中 | 採血・検体の取り扱いによる影響で高く測定される場合がある | 「溶血」などの検査コメント、再採血の必要性 |
| 体の中 | 溶血性貧血などで赤血球が通常より早く壊れ、LDHが上がる場合がある | 貧血・黄疸などの症状、Hb、網赤血球、ビリルビン、必要に応じたハプトグロビンなど |
注記だけで「体内の病気」あるいは「採血の影響だけ」とは決められません。黄疸、尿の色の変化、息切れなどがある場合は、注記の有無と一緒に医師へ伝えてください。溶血性貧血では、症状と複数の検査を合わせて調べます。
高い原因を調べるとき、一緒に見る検査
LDHは肝臓・筋肉・血液の病気、感染症など、幅広い状況で上がります。激しい運動や一部の薬でも変化するため、ほかの値と症状を組み合わせて確認します。
| 確認する手がかり | 関連する検査 | 受診時に伝えること |
|---|---|---|
| 肝臓の状態 | AST、ALT、総ビリルビンなど | 黄疸、飲酒、薬やサプリメントの使用、過去の肝機能の結果 |
| 筋肉への負担・障害 | CK、必要に応じたミオグロビンなど | 激しい運動をした日、筋肉痛、けが、力が入りにくい症状 |
| 貧血など血液の変化 | 血算、網赤血球、ビリルビン、必要に応じたハプトグロビンなど | 息切れ、だるさ、尿の色、これまでの貧血や血液の病気 |
| 感染・炎症 | 血算、CRPなど | 発熱、痛みやせきなど、症状が始まった日と経過 |
すべての検査を全員が受けるわけではありません。LDHが高い状態が続き原因がはっきりしない場合などは、必要に応じてアイソザイムや臓器別の検査が選ばれます。肝硬変や進行性筋ジストロフィーもLDHが上がることのある病気ですが、LDHの高さだけでこれらの病気とは判断できません。
再検査までに準備すること・早めに相談する症状
- 今回と過去の結果表をそろえる。LDHの数値、基準範囲、採血日、溶血の注記、AST・ALT・CK・血算の結果を確認します。施設や検査法が変わった場合はそれも伝えます。
- 採血前後の出来事を伝える。激しい運動をした日と内容、筋肉痛、けが、発熱、黄疸や息切れなどの症状が出た時期をメモしてください。
- 薬と再検査の条件を確認する。処方薬・市販薬・サプリメントの名前と使用量を伝えます。薬を自己判断で中止せず、運動や食事の注意は再検査を受ける医療機関へ確認しましょう。
LDH単独の採血には通常、特別な準備はありません。ただし、同時に受ける検査で食事などの条件が付く場合があるため、予約時の案内を確認してください。再検査と精密検査の受け方も参考になります。
要再検査・要精密検査の指示があるとき、前回より大きく上昇したとき、高値が続くときは、結果表を持って健診先や内科へ相談してください。一律に「何週間待てばよい」とは決められません。黄疸、強い筋肉痛、発熱、息切れなどがある場合は、予定の説明日を待たずに症状を伝えて受診を相談します。
突然の強い胸痛、急な呼吸困難、意識の異常がある場合は119番へ。LDHの数値や再検査の日を待たず、症状を優先してください。
LDHが低いと表示された場合
低値は通常、健康上の問題とされないことが多いものの、大量のビタミンC・Eの摂取や、まれな遺伝性の酵素欠損が関係する場合もあります。低値が続くときや運動時の筋肉の症状があるときは、使用しているサプリメントも含めて医師に伝えましょう。LDHが低くても、ほかの異常に対する受診指示は守ってください。
LDHについてよくある質問
LDHが高いと、がんの検査を受ける必要がありますか?
LDH高値だけでがんとは判断できず、全員に同じがん検査が必要になるわけでもありません。運動、検体の溶血、肝臓・筋肉・血液の変化なども確認し、症状やほかの検査に応じて追加検査を決めます。がんの診断後にLDHを病状や治療経過の確認に使う場合と、健診で初めて高値だった場合は目的が異なります。
参考・出典
- 日本臨床化学会「ALP・LD測定法変更について(医療従事者向け)」(2019年11月21日版、4〜5頁:成人の範囲・検査法と換算。参照日:2026-10-21)
- 京都大学医学部附属病院検査部「LD(乳酸脱水素酵素)」(IFCC対応法の基準範囲。参照日:2026-10-21)
- 東京大学保健センター「LDH(乳酸脱水素酵素)」(施設独自の健診判定。参照日:2026-10-21)
- 倉敷中央病院「乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)」(溶血・検査法の影響。参照日:2026-10-21)
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus「Lactate Dehydrogenase (LDH) Test」(高値・低値、運動・薬と採血の影響。参照日:2026-10-21)
- MedlinePlus「Lactate Dehydrogenase (LDH) Isoenzymes Test」(総活性と型別検査。参照日:2026-10-21)
- MedlinePlus「Haptoglobin (HP) Test」(溶血性貧血と関連検査・症状。参照日:2026-10-21)
- 消防庁「救急車利用マニュアル」(成人の救急症状、冊子3頁。参照日:2026-10-21)
検査結果の解釈と追加検査は、症状・病歴・服薬・検査条件を合わせて医師が判断します。治療中の検査や受診の指示がある場合は、担当医の案内に従ってください。
