筋肉痛・脱力・尿の変化があるとき

激しい運動、暑い環境での作業、けが、薬の服用などの後に、予想以上の筋肉痛、筋力の低下、茶色やコーラ色の尿、尿が少ないといった変化があれば、横紋筋融解症などを調べる必要があります。運動を中断し、速やかに医療機関を受診してください。症状が全部そろうとは限りません。[6・7・9]

急な強い胸痛、急な息切れ・呼吸困難、意識がおかしい場合は119番です。ミオグロビンの数値や次の採血結果を待たないでください。[10]

血液と尿の基準範囲を取り違えない

結果表の「血清・血漿」「尿」などの欄を確認してください。血液中の濃度と尿中の濃度は別の検査です。同じng/mLでも、基準範囲を入れ替えて比べることはできません。

下表は各検査会社が掲載する基準範囲の例です。検査機関・測定法で異なるため、ご自身の結果表にある範囲を優先してください。[1・2]

ミオグロビンの基準範囲の掲載例(2026年10月23日確認)
検体・掲載元測定法基準範囲の例
血清:ファルコバイオシステムズCLEIA法男性17.4~105.7 ng/mL
女性14.3~65.8 ng/mL
尿:BMLCLEIA法2.0 ng/mL未満

たとえば、血清80 ng/mLは上の男性の範囲内ですが、女性の上限を超えます。一方、この80という数値を尿の基準範囲で判定するのは誤りです。基準範囲内かどうかだけで病名や重症度は決まりません。採取した時刻、症状、他の検査結果も必要です。

高いときは筋肉への負担と腎機能を確認する

心筋や骨格筋の損傷により、血液中や尿中のミオグロビンが増えることがあります。激しい運動や外傷、筋炎、筋ジストロフィーなどが関係します。高値だけで原因を一つに決めることはできません。[1・3・4]

広い範囲の筋肉が壊れる横紋筋融解症では、ミオグロビンなどが放出され、急性の腎障害やカリウムの異常を伴うことがあります。CKで筋肉への影響を、クレアチニンや尿量などで腎臓への影響を確認します。高値になった人が全員、腎不全になるわけではありません。[7]

症状がある場合、尿の色が薄くなるまで自宅で待ったり、自己判断で大量の水を飲んで治そうとしたりせず、受診してください。必要な治療は腎機能や全身の状態によって変わります。

尿潜血陽性は、ミオグロビンが出ているという意味?

尿潜血は、試験紙の反応を見る検査です。赤血球由来のヘモグロビンだけでなく、ミオグロビンにも反応するため、陽性だけでは血尿かミオグロビン尿かを区別できません。[5・6]

尿の検査で確かめる内容
検査わかること結果の注意点
尿潜血(試験紙)ヘモグロビンやミオグロビンなどによる反応陽性でも、赤血球が増えているとは限りません。
尿沈渣顕微鏡で赤血球などを確認潜血陽性なのに赤血球が増えていなければ、ミオグロビン尿やヘモグロビン尿なども検討します。
尿中ミオグロビン尿中のミオグロビンを測定採尿時期によって捉えられない場合があり、陰性だけで筋肉障害を除外できません。

「潜血陽性・赤血球が少ない」という組み合わせだけで横紋筋融解症とは診断できません。溶血など別の原因もあるため、筋肉の症状、CK、腎機能と合わせて医療機関で確認します。[5・7]

ミオグロビンとCK・心臓の検査はどう違う?

ミオグロビンは筋肉が傷ついた後、比較的早く血液中に出ますが、体からも早く排泄されます。CKは遅れて上がり、数日間高いことがあります。結果表には検査日だけでなく、運動や症状が始まった日時も添えると、経過を確認しやすくなります。[1・6]

一緒に確認する検査と目的
項目主な確認内容単独では決められないこと
ミオグロビン筋肉から出たたんぱく質の血中・尿中濃度原因が心臓か骨格筋か、検査時点より前に筋肉障害がなかったか。
CK(CPK)筋肉の傷害と、繰り返し測定したときの増減1回の数値だけで原因や腎障害の程度は決まりません。
クレアチニン・尿量・カリウム腎機能や電解質への影響症状や過去の腎機能と合わせて判断します。
トロポニン・心電図胸痛などがあるときの心筋障害の評価発症からの時間や診察所見が必要で、追加・再検査を行う場合があります。

ミオグロビンは心筋にも骨格筋にも含まれるため、高値だけで心筋梗塞とはいえません。胸痛がある場合は、トロポニンや心電図などで確認します。[3・8]

受診・再検査に持参するもの

  • 結果表:血液・尿の区別、数値、単位、基準範囲、採血・採尿の日時。過去のCKやクレアチニンの結果も持参します。
  • 症状の経過:筋肉痛や脱力が始まった日時、痛む部位、尿の色・量の変化を伝えます。今、強い症状があれば記録をそろえるために受診を遅らせないでください。
  • 直前の出来事:運動の種類・終了時刻、暑い場所での作業、けが、けいれんなど、普段と違ったことを伝えます。
  • 薬の情報:お薬手帳、市販薬・サプリメントの名称、飲み始めた日や増量した日を伝えます。薬の服用後に筋肉痛・脱力・赤褐色尿があれば、直ちに処方元や医療機関へ連絡してください。[9]

再検査まで何日運動を控えるか、薬をどうするかは、検査目的と症状によって違います。数値だけで処方薬を中止せず、受診先へ確認してください。食事・水分・採尿容器について指示があれば従います。再検査と精密検査の進め方も確認できます。

よくある質問

尿が茶色くなければ、横紋筋融解症ではありませんか?

尿の色だけでは否定できません。普段より強い筋肉痛や脱力だけの場合もあり、症状は運動などの数時間後から数日後に出ることがあります。尿が普段の色でも、これらの症状があれば速やかに受診してください。[6]

尿中ミオグロビンが陰性なのにCKを再検査するのはなぜですか?

ミオグロビンは早く排泄され、採尿時には検出できないことがあります。一方、CKは上昇が遅れたり高値が続いたりするため、症状と合わせて複数回の測定で増減を確認する場合があります。陰性になったことだけで運動再開や受診不要を判断しないでください。[6]

薬の服用後に筋肉の症状が出たら

PMDA掲載の患者向け資料では、筋肉痛・脱力・赤褐色尿などの症状と、受診時に伝える薬の名前や服用開始からの期間を確認できます。

PMDA「横紋筋融解症:患者の皆様へ」(PDF)

参考・出典

参照日:2026年10月23日。基準範囲は各掲載元の検体・測定法に対応します。

  1. ファルコバイオシステムズ「ミオグロビン(Mb)血清」:血清CLEIA法の基準範囲と臨床的意義。
  2. BML「ミオグロビン定量‐尿」:尿CLEIA法の基準値・検体。
  3. MedlinePlus「Myoglobin blood test」:血液検査の目的・高値の原因(2025年2月13日レビュー)。
  4. MedlinePlus「Myoglobin urine test」:尿検査の目的・採尿(2025年2月13日レビュー)。
  5. 日本腎臓学会「第3章 検尿の位置づけ」:潜血反応と尿沈渣の赤血球の関係。
  6. CDC/NIOSH「Signs and Symptoms of Rhabdomyolysis」:症状・CKの反復測定・尿検査の限界(2025年1月14日)。
  7. MedlinePlus「Rhabdomyolysis」:腎臓への影響・関連検査(2025年9月2日レビュー)。
  8. MedlinePlus「Troponin Test」:心筋障害の評価と発症時刻・心電図との関係。
  9. PMDA「重篤副作用疾患別対応マニュアル 横紋筋融解症:患者の皆様へ」(PDF):症状と受診時に伝える情報。
  10. 消防庁「救急車利用マニュアル」(PDF):ためらわず救急車を呼ぶ成人の症状。

検査結果についての相談

診断、治療、薬の変更は、症状と検査結果を合わせて医師が判断します。強い症状がある場合は基準範囲内でも受診してください。