ALT(GPT)は何を調べる検査か
ALTはアラニンアミノトランスフェラーゼという酵素で、以前の名称がGPTです。肝細胞に多く含まれ、細胞が傷つくと血液中に出るため、肝臓の異常を調べる手がかりになります。
結果表では「肝機能」にまとめられていても、ALTは肝臓に残っている働きをそのまま表す数字ではありません。AST、γ-GTP、ALP、ビリルビン、症状、画像検査などを組み合わせて考えます。数値が高いほど必ず病気が進んでいる、低いほど必ず軽い、という関係にはなりません。
30 U/L超と31・51 U/Lは、何が違う?
検査機関の基準範囲、健診後の判定値、病気を見逃さないための受診の呼びかけは、目的が異なります。数字だけを切り取らず、結果表の判定・医師の指示と一緒に読みましょう。
| ALTの目安 | 資料・意味 | 健診後にすること |
|---|---|---|
| 30 U/Lを超える | 日本肝臓学会「奈良宣言2023」。肝臓の病気の早期発見へつなぐ受診の呼びかけです。 | まずかかりつけ医や内科で原因を相談し、必要に応じて消化器内科などの詳しい検査につなげます。 |
| 31 U/L以上 | 厚生労働省の保健指導判定値。生活習慣などを振り返る目安です。 | 31〜50でも「医療機関へ相談しなくてよい」とは言えません。奈良宣言の目安にも当てはまるため、経過・原因を相談しましょう。 |
| 51 U/L以上 | 厚生労働省の受診勧奨判定値。再検査や生活習慣の指導など、医療機関での管理が必要な場合があります。 | 結果表の受診案内に従い、医療機関で確認します。全員がすぐ薬を始める、同じ精密検査を受けるという意味ではありません。 |
例えばALT 40 U/Lなら、厚生労働省の51以上には届かなくても、31以上と奈良宣言の30超には当てはまります。「次の健診まで何もしない」と決めず、今回と過去の結果を持って相談する場面です。30超は「30以上」とは違い、整数表示なら31から当てはまります。
適用条件: 主に成人の健診後の確認に使う一般的な目安です。ALTだけで特定保健指導の対象や病名を決める表ではありません。治療中、小児、妊娠中、すでに肝臓病がある方は担当医の指示を確認してください。30以下でも、症状や他の検査異常、脂肪肝の指摘があれば相談が必要なことがあります。
飲酒しない人・痩せている人も原因の確認を
ALTの上昇には脂肪肝、ウイルス性肝炎、飲酒、薬・サプリメントなど、複数の背景があります。「酒を飲むから」「食べ過ぎたから」と一つに決めつけず、体重の変化、血糖・脂質、薬の使用、過去の肝炎検査の結果などを医師へ伝えます。
脂肪肝には、飲酒以外に代謝の異常と関連するMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)などがあります。肥満がなくても起こり、ALTが低い場合にも否定できません。ALT高値だけでMASLDと診断することもできないため、腹部エコーの所見や他の原因の確認が必要です。
激しい運動、採血時の体調、薬などが結果に影響する場合もあります。思い当たることは伝えつつ、それだけで一時的な上昇と決めて再検査や受診をやめないでください。
受診前にそろえる、結果・薬・飲酒の記録
「肝機能が高い」「サプリを飲んでいる」だけでは、変化の時期や内容が分かりません。手元の資料で分かる範囲を、次のように具体化すると相談しやすくなります。全部そろうまで受診を延期する必要はありません。
| 持参する情報 | 記録の例・確認箇所 |
|---|---|
| 今回と過去の結果表 | 検査日、ALT・AST・γ-GTPの推移、ビリルビン、血糖・HbA1c、脂質など。腹部エコーの所見や、B型・C型肝炎の検査結果があれば一緒に見せます。 |
| 薬・サプリメント | 処方薬に加え、市販薬・漢方・健康食品の商品名、1回量と回数、始めた時期・量を変えた時期。お薬手帳や、容器・成分表示の写真を使えます。 |
| 飲酒 | 「ビール500mL、5%、週に4日」のように酒の種類・量・度数・頻度を記録。飲まない場合もそのまま伝えます。飲む日の量が違うなら、普段と多い日の両方をメモします。 |
| 体重・体調の変化 | 前年からの体重変化、症状が始まった時期、最近の強い運動、新しい薬の開始と採血の前後関係など。 |
薬を始めた後にALTが上がっても、その薬が原因と確定するわけではありません。処方薬を自己判断で中止・減量せず、処方した医師や薬剤師へ相談してください。サプリメントも含め、使っているものを省かず伝えましょう。
相談先に迷うときは、健診の異常を相談する診療科の選び方を確認できます。まずはかかりつけ医や内科へ連絡し、必要に応じて専門医の紹介を受けます。
再採血と腹部エコーでは、確認することが違う
再採血はALTの変化や他の血液検査との組み合わせを、腹部エコーは脂肪肝などの画像所見を確認する検査です。原因によっては肝炎ウイルスの検査や、肝臓の線維化(硬くなる変化)を評価する検査なども検討されます。全員に同じ検査が必要というわけではありません。
ALTが再検査で下がっても、脂肪肝や線維化の程度まで分かったことにはなりません。「原因は何が考えられるか」「次は何を、いつ確認するか」「通院・検査を続ける必要があるか」を結果説明で確かめましょう。
- 予約時: 採血だけか、腹部エコーなども予定しているかを確認し、食事・飲み物・当日の薬の指示を聞きます。他の検査も含めて準備が変わるため、自己流で絶食・休薬しないでください。
- 受診当日: 今回と過去の結果表、薬の情報、上の記録を見せます。食事をした場合や指示どおりに準備できなかった場合も、隠さず伝えます。
再検査・精密検査の手続きでは、受診先への連絡や持ち物も確認できます。
AST・γ-GTP・脂質/血糖とあわせた見方
ALTは肝細胞との関連が比較的強い一方、健康診断では複数の項目を組み合わせて確認します。次の表は代表的な確認ポイントであり、診断を確定するものではありません。
| 組み合わせ | 確認したいこと |
|---|---|
| ALTとASTが高い | 肝細胞への負担、脂肪肝、肝炎、薬剤、飲酒、体重変化などを確認します。 |
| ALTがASTより高い | 脂肪肝や肝炎など、肝臓由来の変化が目立つことがあります。腹部超音波、血糖、脂質、腹囲もあわせて確認します。 |
| ALTが高く、γ-GTPも高い | 飲酒、胆道系、脂肪肝、薬剤などの影響を確認します。飲酒だけが原因と決めつけないことが大切です。 |
| ALTが高く、血糖・HbA1c・中性脂肪も高い | 脂肪肝、糖代謝、メタボリックシンドローム、体重変化との関連を確認します。 |
| ALTが高く、ビリルビンも高い | 黄疸、胆道系、肝炎などの確認が必要になることがあります。症状がある場合は早めに相談します。 |
低い場合に考えられること
ALTは健康診断では主に高値を確認します。低めの数値そのものより、他の検査値や症状との組み合わせを確認しましょう。
関連する病気
次の病気や状態と関連することがあります。ただし、検査値だけで診断はできません。
関連する検査項目
生活習慣で見直したいこと
体重、飲酒量、間食、夜遅い食事、運動不足、睡眠不足を見直すきっかけになります。脂肪肝やメタボリックシンドロームが関係することもあるため、腹囲、BMI、血糖、HbA1c、脂質、腹部超音波の結果もあわせて確認しましょう。
食事や運動は無理な制限ではなく、継続しやすい変更から始めることが大切です。肝臓病、糖尿病、腎臓病、心臓病がある方や治療中の方は、自己判断で極端な食事制限や強い運動を始めず、医療機関に相談してください。
症状があるときは、健診の再検査を待たず相談
白目や皮膚が黄色い、尿が濃い色になる、便が白っぽい、強いだるさ、吐き気・腹痛などがあるときは、結果表のALTがそれほど高くなくても早めに医療機関へ連絡してください。症状が続く・強い場合は、予約した再検査の日まで待たず、その状態を伝えて受診の時期を確認します。
要再検査・要精密検査の案内、前年からの急な上昇、他の検査異常がある場合も、結果表全体を見せて相談しましょう。
よくある質問
ALTが31〜50 U/Lのとき、受診では何を確認しますか?
51は健診の受診勧奨判定値で、そこに達しない人の相談が不要という意味ではありません。日本肝臓学会は30 U/L超を受診のきっかけとしています。過去の値、他の項目、症状や脂肪肝の所見も含め、かかりつけ医へ相談してください。
再検査でALTが下がれば、通院や検査は終わりですか?
値が下がったことと、原因や病気の進み具合が確認できたことは別です。脂肪肝などはALTが低くても否定できません。追加検査や経過観察が必要か、次に確認する時期と一緒に医師へ確かめましょう。
脂肪肝とALTの関係を詳しく知りたい方へ
肝炎情報センターの一般向け解説では、飲酒以外の脂肪肝(MASLD)、ALTだけでは分からないこと、腹部エコーや線維化の検査を確認できます。
肝炎情報センター「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」(外部サイト)関連記事
参考・出典
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」
- 厚生労働省「別紙5・フィードバック文例集等」(125頁: ALTの保健指導・受診勧奨判定値)
- 日本肝臓学会「奈良宣言特設サイト・医療関係者向け」(ALT 30 U/L超からの受診の考え方)
- 肝炎情報センター「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」(2026-06-10更新: 非肥満の脂肪肝、ALTと病状、画像・線維化の検査)
- MedlinePlus「ALT Blood Test」(酵素の性質、症状、薬・検査準備など。米国の基準値は本記事の健診判定表に適用していません)
情報の基準日: 2026-10-08。
医療情報に関する注意
このページは、健康診断や血液検査に関する一般的な情報です。診断、治療、服薬変更、受診不要の判断を行うものではありません。検査値の解釈は、検査機関、測定方法、年齢、性別、既往歴、服薬状況、症状などによって異なります。気になる結果がある場合は医療機関へ相談してください。